私と歯の妖精との思いでは甘くほろ苦い物語

日本でもある一定の人たちはアメリカの文化の一部である「歯の妖精」の話を知っていると思います。

子どもの乳歯が抜けたとき、その子は寝る前にその歯を自分の枕の下に置いておきます。

寝ている間にそれをとりに来る「歯の妖精」、すなわち「テゥース・フェアリー」がそれをお金と引き換えに持って行くのです。私は子ども時代をアメリカで過ごしたため、その文化を親が実践してくれていたのです。

歯の妖精の正体が親だと分かったのは最後の乳歯が抜けた後だったのですが。

初めて歯が抜けたのは6歳のときだったと思います。一番下の真ん中の歯でした。

血がたくさん出たので泣きました。それが治まった後、早速その晩ティッシューにその歯を包み、歯の妖精にお祈りしたのを覚えています。

確か「クォーター(25セント)を一つください、どうかお願いします」とお祈りしてから寝ました。

そしたら朝起きたら同じティッシューの中にはクォーターが2つもあったのを覚えています。

初めての経験だったのでさすがに嬉しかったです。そしてもちろんそのときには本当に歯の妖精がいることを信じていました。

それ以降は歯が抜けるたび、同じように歯の妖精がお金を残してくれるのでした。

それも私の年齢が上がって行くたびコインだけだったのがお札も来るようになりました。

私はかなり遅い年齢までそういうものを信じていた方なのだと思います。9歳ぐらいのときには「歯の妖精さん、サインをください」と枕の下に歯と一緒に置手紙をしてのですが、翌朝はその紙に「歯の妖精より」とサインしてありました。嬉しくなった私は「やっぱり歯の妖精はいるんだ」と思い、妖精の存在を信じ続けました。

 しかし4年生か5年生ぐらいになったとき、同級生の影響もあって、私はさすがにうっすらと、嫌うっすらとではなくかなりはっきりと現実を知っていました。

それでもお金目当てに同じ習慣を続けていたのですがね。

そしてある日、結構奥の方の歯が抜けたとき、私は少し意地悪をしてしまいました。置手紙には「歯の妖精さん、サインをください、『歯の妖精』と書くのではなく本名をサインしてください」と書いたのです。どういう反応が返ってくるか知りたかったのです。

そしたら翌朝、5ドル札と一緒にサインしてある置手紙もありました。そのサインは母の本名でした。

頭では知っていたにも拘わらず、現実を剥きだしに自ら覗いてしまった、見てはいけないものを見てしまった、自分で自分の夢を壊してしまったかのような気持ちになり、口の中が苦く感じてしまった私はしばらくボーっとしていたのでありました。

 高校生になり、親知らずを早めに抜いたときの私はそのことを思い出し、歯医者さんに頼んでとっておいてもらった親知らずをこっそりと枕の下に置いて寝ました。

予想通り、歯の妖精が私のところに来ることはもうありませんでした。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です